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「好き」って、恋だけの言葉だったっけ。
友達で、クラスメイトで、下宿仲間で、片思いの相手で——。呼び方がいくつもある関係の中に、たしかに“好き”は息をしている。
恋とそれとあと全部は、そんな曖昧で、だからこそ本物っぽい感情を、まっすぐに掬い上げていく青春小説です。テーマは恋だけに収まらず、「死への恐怖」や「言葉にできない不安」まで抱きしめながら、それでも“いま生きている側”へ視線を戻していく——読後に、タイトルが静かに胸へ落ちてくる一冊。

作品情報
- 著者:住野よる
- 発行日:2023年2月24日
- 発行元:文藝春秋
- ページ数:252(単行本)
あらすじ(ネタバレなし)
夏休み、高校生の“サブレ”は、ある目的のために“めえめえ”を誘い、祖父の家へ向かいます。行き先には、サブレの親戚が亡くなった家があり、ふたりは「死」という重たいものに、否応なく近づくことになる。
ただ、これは暗い話で終わりません。
見知らぬ町で一緒に過ごし、会話を重ねるほどに、ふたりの間に「恋」という一語では片付かない感情が増えていく。高校生の“たった四日間”の旅が、恋だけじゃない“あと全部”を照らしていく物語です。
魅力1:友情とも恋とも言い切れない、距離のリアルさ
この作品のいちばんの読みどころは、関係性の温度が「わかりやすい恋愛」に整形されないところ。
仲がいい、でも面倒くさい。
惹かれる、でも怖い。
言い合ってしまう、でも離れない。
そういう不器用さが、ちゃんと物語の中心に置かれています。関係が変わる瞬間って、だいたい綺麗じゃなくて、言葉が刺さったり、沈黙が長かったりする。その“生っぽさ”が丁寧に描かれるから、読んでいる側も自分の記憶を引っ張り出される。
魅力2:「死が怖い」を、逃げずに扱う
サブレの行動の根っこには、死に対する強い恐れがあります。作品内ではその恐れが、気分や雰囲気ではなく、ちゃんと“理由のあるもの”として語られていく。
ここがすごいのは、読者に答えを押しつけないところです。
「死は怖いよね」で終わらせず、怖いからこそ人は何を選ぶのか、誰の隣にいたいのか、どんな言葉を持ちたいのか——そんな問いが、会話の中から少しずつ立ち上がってきます。
魅力3:タイトルが“あとから効いてくる”構造
読み進めるほどに「恋と、それと、あと全部」という言い方の意味が変わっていきます。
恋が中心にあるのに、恋だけに収束しない。
一緒にいる理由が、ひとつに決めきれない。
でも、その決めきれなさこそが、ふたりの関係の核心になっていく。
読み終わったあと、タイトルが説明じゃなくて“感情の結論”として残るタイプの作品です。
感想ポイント
- 言葉の応酬が、喧嘩じゃなく“確認”に見えてくる瞬間
相手を試すみたいで、でも本当は「見捨てないで」を言い換えているだけかもしれない、あの感じ。 - 重いテーマなのに、読後感が“冷たくならない”理由
死を見つめた先で、ちゃんと生きている側の手触りが残る。 - 恋愛小説が苦手でも読める“恋愛の描き方”
進展やキュンだけじゃなく、相手の面倒なところまで含めて関係が進む。
こんな人におすすめ
- 「恋愛小説=甘いだけ」じゃ物足りない
- 友情と恋の境目が曖昧な物語が好き
- “死”や“不安”を、物語として受け止めたい
- 君の膵臓をたべたいで心を持っていかれたことがある
まとめ
恋とそれとあと全部は、恋を描きながら、恋だけでは言い切れない感情——恐怖、不安、優しさ、面倒くささ、その全部を物語にしていく作品です。たった四日間の夏休みが、関係の名前を増やしていく。そして最後に、タイトルが“説明”ではなく“実感”として残る。


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